山茶花 一輪

2006年11月11日 風の戯言


 今日は一日中自室で過した。
 本屋から届いた浅田次郎の「中原の虹」に沈殿し、清朝末期の中国に漂っていた。「蒼穹の昴」「珍妃の井戸」そして今回の「中原の虹」。ストーリーテラーとしての構想力の大きさと物語の奥深さに魅了され続けている。一言で言えば「面白い!」のだ。満州国建国の前後に動いた馬賊の棟梁張作リンはいつもステレオタイプの馬賊だった。今回は彼に血が通った。
 読書に疲れて窓の外に目をやれば、垣根の山茶花に一輪の花が付いていた。
 山茶花の人待ちて咲く心あり 佐藤壷泡 
 義兄であり親代わりであった秋雄兄がガンの手術を終えて帰宅したときの句である。その直ぐ後の11月25日、帰らぬ人となった。現職の柏崎医師会長 享年53歳。壷泡は「こほう」と読み、ゴッホから取ったらしい。医師として仰ぎ見るものがあったのだろう。もう33年が過ぎる。
 
 旅を終えて、改めてみる柏崎の風景は美しいと思った。
 山は紅葉、田圃は刈入後に伸びた稲が黄色く染まっている。葉が散って枝ばかりが目立つようになった桜の木も何か新鮮な美しさがある。
 何もかもが誇らしく見え、嬉しくなった。

 様々に想いの中に浸って、旅の後の疲れを忘れさせてくれた一日だった。