善根堰
加納から鯖石川を少し歩くと善根堰がある。
この堰から西江と呼ばれる用水路を通って鯖石川の水は安田の田圃を潤している。何処の用水もそうだが、稲を作るためにはるか上流から水を引く為の先人達の苦闘は忘れてはならないことなのだろう。
夏草の茂った堤防を、川のせせらぎと秋の気配を含んだ風が伴走してくれる。一面の田圃は実りの兆しで色づき、刈り取りまで大水と台風が来ないように祈っている。
子供の頃はこの川で水泳や川遊びをして夏休みを過ごし、夕方になれば愛犬セッターを連れての遊び場でもあった。鳥専門の猟犬は夏の川が大好きで、気の済むまで川の流れに浸り水浴びを楽しんでいた。川原の石に腰掛け、小一時間も犬の遊びに付き合っていたあの頃の石塚修は何処に行ったのだろう。遠い昔の自分に会って見たいと思う。
あの頃も何時も孤独だったように思う。犬達だけが心許せる仲間で、何時も5、6頭の犬を連れて遊んでいた。寂しいと思ったことも無かった。
宮平の堰から笹崎、行兼までは堰きとめられた川に夏の雲が映り、この風景もいいもんだ。次第に両岸の山も迫り、暴れ川を堤防の中に押込んだ農民達の喜びの歌が聞こえてくる。
森近の橋の完成は間近で、災害の度に流された橋が永久橋に建て替えられている。
もう少し堤防を行くと、俺のふるさと「行兼」がある。地名より人名に近い感じがするが、そのいわれは知らない。