秘すれば花・・・
瀬戸内寂聴の本を始めて買ってみた。「秘花」世阿弥が佐渡に流されてからの生活を前半は世阿弥自身の語り、後半は佐渡で身の回りの世話をした紗江の語りとして、全編を静謐な世界が包み込む。
俺は「世阿弥」も「能」も何もかも知らない。しかし寂聴の世界に沈殿している時間は至福だった。こんなに静で激しい心の時代があったのかと・・・・。
薪こる遠山人は帰るなり
里まで送れ秋の三日月
順徳院の御製だそうだ。なんという美しさか!
天皇から防人や庶民まで和歌に映したこの国の心根の優しさを改めて思い起こさせてくれる。余分だが、この時代の欧州などでは「庶民」は動物に近い生活だったとされる。
浅田次郎は定番。今回は「月下の恋人」。ストーリーの豊かさと表現の確かさ。
「夜が闇の権威を誇っていた時代」上野駅から直江津行きの汽車に乗った「列車は何の前ぶれもなく、私の日常をぐいと押しやる感じで動き出した」
不意にこんな表現に出会うと泣き出してしまいそうになる。どうしてアイツは俺の心を掻き毟るのだろう。
台風は上手く柏崎を避けて行ってくれた。それにしてもにぎやかな年だネェ。
写真は高柳町荻の島 松尾神社