ぶらり、ぶらり

2007年11月15日 風の戯言


 相変わらず本の世界のぶらぶら歩きは止まらない。

 殆ど無定見、無節操・・・活字が読めればそれで満足なんて極貧状態は既に脱したが、一定のテーマを深堀しょうなんて欲も能力も持ち合わせていない。本は衝動買いを最善とする、なんていいながら本屋を覗くと小遣いのある限り仕込んでしまう。積んで置くだけで満足、ってこれも病気の内?

 最近は浅田次郎の中原の虹4巻に貪りついてしまったが、何の風の悪戯か松井今朝子の「吉原手引草」「銀座開化事件帖」ですっかりファンになってしまった。
 歴史小説が男達の英雄伝説だとすれば、松井さんの主人公達は塵取で掃いて捨てられるような運命の中にいる平凡な男や女達の物語。知性的な、と言うのは人間的なって意味なんだが、男と女の洒落た会話が好い。

 現代のように「好きだ」と言ってしまえばそれで済む言葉を、結局双方とも分っていて確認しあえない心の疼きがある。じれったいほど回りくどく、決めの一言がいえなくて一生ひきづってしまうようなシーンが、誰にでも2枚や3枚はあるのだ。女の手を握るのに、どれだけの勇気が要ったことか・・・そんなことが思い出させられる。

 豊富な電気のお蔭で世の中明るくなって、妖怪も幽霊もいなくなって、男の心も女の真も、みんな干からびてしまった。
 目と目が合っただけで、顔を赤らめていたころ・・・今から考えると馬鹿な時代でも、もっと深いものがあったような気がする。
 歳のせいでもなく、この本の余韻なんだろうけれど・・。