かけがえのないもの
養老孟司「かけがえのないもの」(新潮文庫)をメモを取るヒマのないままのめり込んでしまった。
何時も意表を突いた、それでいて全うな着想と理論に基づいた氏の本は楽しい。
かけがえのないもの・・・それは自然であり、子供であり、身体だという。予測のつかないそれらとの付き合いを忘れてしまい、都市化の中で結果を予測し、目標を掲げ評価を求めて生きる生き方は詰らない、という。「ああすれば、こうなる」という未来を先取りした予測できる生き方に何の感動があるのか。
ブータンではGNPではなくGNH(ハッピネス=国民総幸福度)を追求する、と若くて面白い国王はそう言っているそうだ。
人間が作ったものは信用してはいけない・・・とも。
現代経済社会に住むものは、時には風の旅人になる必要があるようだ。言葉の通じない世界へ、一人フラフラと遊び、再生してまた働くことも良し、だね。
最近、リタイヤしたり解雇された人たちが四国八十八箇所お遍路さんの旅に出たがる。こびり付いた不浄なものをさっぱりと清めてくるのも人生の大切な時間、ですよ。
今年の冬は天気予報も当てにならず、思いっきり気まぐれの季節が過ぎていく。加納の医者どんの葬式が済んで、ジワリ喪失感が押し寄せてくる。
かけがえのないもの、とは、自ら選ぶから「かけがえのない人生」であって、それは「かけがえのない未来のこと」
「誰かの為の人生」なんてウザッタクテ、ほんのり暖かくて、最高の価値あるもののように思える。