痴呆症の練習

2009年05月25日 風の戯言


 67歳を過ぎたら大分怪しくなってきた。
 今日は市役所の駐車場で2台の車に擦ってしまった。イヤハヤ・・・。
 忘却とは忘れ去ることなり・・・君の名は・・・忘れた。
 過去は霧の彼方に消えて、現在はハッキリせず、未来はミステリアス。まぁ、記憶喪失が好き勝手に飛び回っている状態。
 要は全体がボーとしてしまうことなのだが、認知症はその始まりが苦しいという。何故苦しいかといえば記憶がマダラであることを認識している、からだろう。
 俺から言えば、そんなことでクヨクヨするのは可笑しい。人間はそうなるのが運命、そうでない人もいるが、なのだから自分が毎日どの変まで進んだか楽しんでしまえばいいことなのだ。
 逆手に取る方法もある。一人で海外旅行をすることも多いのだが、困った時にはボケた振りをする。大体言葉がわからないのだから正気だかアンポンなのかは判らない。「御親切に、すみませんねー」なんて「志村」みたいに言いながら敵を観察していると「いいカモ!」とばかり吹っかけてきたりする。
此処が勝負、という時に「キラリッ!」と目を光らせて「違うだろうが・・・!」と電卓をもぎ取って計算しなおして見せると、相手は口惜しそうな、情けない顔して睨んでいる・・・意地悪爺さん・・・・へっへっへ、

 何時、何処で会ったか良く覚えていないけれど、マイクロソフトの古川享さんと話したことがある。パーティの席だったので飲み物片手に接近遭遇した程度だったのだけれど、その時の彼の言葉が忘れられない。
 「石塚さん・・」渡した名刺を見ながら彼は続けた「ビジネスは目的じゃないんですよね・・・多分、人と出会う為の手段なんだと思うんです。だから、良い人と出会う為に良いビジネスをしなくてはならないんですよね・・・」
 今もその言葉を思い出すと目頭が熱くなる。その時まだ彼は30代だったと思うけれど、こんな若者がリードするコンピュータの世界を選んだことは間違いじゃない。そう確信したことを今も忘れられないでいる。
 痴呆症は進んでいるが、俺には宝物のような言葉が記憶のそこに残っている。思いっきり楽しんでやるか !