部屋に蝋燭を灯し、窓辺の椅子で庭を見ていると切ない程の昔に引き戻される。月明かりに庭の芝や木々が美しい影を創っている。
月明かりが、こんなにも明るかったのか、と驚く。
よく、「昼間のように明るい」と言うけど、なにやら物悲しさ・・・子供の頃から忘れていた月の灯りの物悲しい光に惹かれてしまう。
物悲しく香を焚き、物悲しく音楽を流し、物悲しく酒を飲む。
忘れていた俺の寂しさに目が霞んで来る。
俺は一人。それが俺。宇宙を漂う小さな浮遊物。それが俺。心配するな。
月明かりと音楽が俺の中で交じり合い、どう表現していいのかわからない悲しみらしき香りが漂い流れて行く。