山本山に遊ぶ

2012年05月03日 風の戯言


 朝の雨も上がり、青空が少し見えてきたので小千谷の山本山まで車を走らせた。

 山の麓の西谷で、毎年「風船一揆」を開催している。スキー場があった頃は、山頂から大勢のスキーヤーが松明を掲げて滑り降りてくる。雪原の花火と、熱気球に火を灯す「バルーングローが続き、思い出の積み重なった土地だ。

 山頂からは360度の展望が開け、郷土の詩人西脇順三郎がこの地を愛し、自らの終焉の地として選んだ。山頂に詩碑がある。

  山あり河あり
  暁と夕陽とが
  綴れ織る
  この美しき野に
  しばし遊ぶは
  永遠にめぐる
  地上に残る
  偉大な歴史

 大学の頃、詩を学びたくて、トインビーの研究者として有名だった山本新教授に、誰に会えばいいか聞いた。先生に大学図書館の人を紹介して頂き、改めてその方に伺ったら「西脇順三郎」を薦められ、触れてみたが何にも理解できなかった。

 後年、小千谷の出身であり、晩年を古里で過ごすことを選んだ偉大な詩人であることを知った。当時の星野市長は「小千谷最大の誇り」と弔辞に結んだ。

 「文化」というものの偉大さを味わった一瞬だった。

 人は皆、死を迎える。
 迷いながらも、信ずる道を生きればいい。
 どのみち、大した違いはないのだ。
 そう思っていたが、しかし、違うのかも知れない。

 追伸
 泥沼のような横浜の生活から実家に戻り建設業に未来を求めて足掻いていた頃、近くの寺に合宿を組んだ若い東大の先生に「ジャン・ジュネ」を読めと薦められた。詩人であり、窃盗や乞食、男娼から麻薬密売まで繰り返し、サルトルから誓願により恩赦になったという、この「化け物」ももう一度何処がで触れておかなくてはならない。宿題が多すぎる。