沢木耕太郎

2014年12月23日 風の戯言


 「波の音が消えるまで」
 
 沢木耕太郎の新刊に沈んでいる。

 文春新年号「高倉健 最後の手記」に寄せられた「深い海の底に-高倉さんの死」という寄稿を読んで、久し振りに沢木を読みたくなった。

 小説の舞台となっているマカオも懐かしいけれど、物語のスタートが返還前日の香港、あの歴史的な事件の前後6日間を、自分の体験ではないような記憶が蘇る。
 ペニュンシュラの一室で、チャールズが式典会場を離れる目撃していたのだけれど・・・。

 カウントダウンの一瞬を、期待を込めて群衆に交じっていたのだけれど、静かに時は流れて行ってしまったのを思い出す。

 今日は雨っぽい雪。

 空は少し明るくなってきたのかな。

 古い昔のことを、同時に思い出している。

 北条の深沢から広田に向けて、船岡山を崩して道を作る工事。山の下に染み出す湧き水を集めるために「蛇籠」に詰める玉石を、背中の籠に入れて雪道を運んでいた。来る日も来る日も、2ケ月くらい雪空が続き、俺は何をやってんだろうと、本当に暗い気持ちに落ち込んだ時期があった。

 あれから50年近くが経つ。

 窓に、陽が差してきた。