飛べないハクチョウ
立春が過ぎたけどザイゴは奇妙な冬に戸惑っている。
例年だと寒さに震えている季節に、今年は暖かいのだ。
古い話になるけど、昭和終わり頃の大雪は酷かった。
加納では3メートルを超す積雪が3年も続いた。
冬場仕事にならない職人達と「雪援隊」を組み、年寄りの家の雪下ろしに精を出していたのを思い出す。
仕舞酒が過ぎお互い真っ直ぐ歩けないのを笑いあいながら雪降る夜道を家路につく大声が白い暗闇に融けていった。
「雪地獄、祖先の地なれば住みつげり」雪国十日町の嘆きだけど、温かい味があった。
あれから温暖化で今年も雪は少ない。
ただ迂闊に「雪が少なくて良いあんべぇだね」なんてノンキなこと言ったら袋叩きにされてしまう。
土方の冬は「除雪」が頼りだし、「ガルルのスキー場」もそう。
「小千谷風船一揆」も雪が少なく、関係者はヤキモキしている。
吉井の長橋の池に飛べないハクチョウがいる。
春になっても北に帰れず、近所の人の世話で蓮の葉の陰で夏を過ごしている。
冬が近づくと、シベリアから離れていた家族が帰ってくる。
飛べないハクチョウが家族と一になって、嬉しそうにしている姿はどこか悲しい。
雪のない冬だけど、間もなくまた別れの季節がくる・・・。
最近、原発が事故を起こした時の夜間積雪時の避難訓練が議論されている。
市長が自分自身で車を走らせてみて「危険で困難」と実感したとのニュース報道があった。
最高指揮官が前戦視察をすることは素晴らしいことだし、説得力が全く違ってくる。
本当は豪雪時のあの暗闇の白い道を走ってみて貰いたいとも思う。
みんな飛べない翼しかなくなるんだよ。
原発災害は夜間積雪時だけでなくフクシマのように地震や津波、それに暴風も豪雪も想定すべきだと思う。
「危険で困難」な状況で「避難は不可能」と考えるべきだろう。
だとするならばどうせ帰れない「避難」なんて考えない方がいい。
原発に従事する人達にはもっと覚悟を決めて「絶対に安全な原発」を実現させ、柏崎の経済も支えて欲しい。
「産業」は人を幸せにする為に存在するのだと思う。
「もし、事故が起きた時」なんてテレビや新聞のコマーシャルを流し、地域の不安を煽り立てて何考えているんだろうと思う。
俺ぁ柏崎を捨てて逃げるなんて考えたこともないし、加納の我が家を離れるなら死んだ方が幸せだと思っている。
冗談じゃないよ。
避難なんて絶対イヤだからね。アッカンベーだ !
柏崎日報 2019/2/9 掲載分