痔鎮祭

2019年05月01日 風の戯言

この5月で喜寿を迎える。
若い時の大酒が祟って頭と口は最悪だが、他は至って健康。
今まで、手術・入院は「痔」を切った時だけ。
これはそのときのお粗末。

「痔主」になったのは土方見習いを始めた頃だからもう50年も前のことになる。
多少の存在感から次第に強烈な自己主張を繰り返し、イボ痔から裂け痔に成長し、やがて痔瘻様になる間、俺は優しい言葉一つ懸けずに邪魔者扱いにしてきた。

時折脳天を突き刺すような激痛はあるけれど命に別状あるまいと高をくくっていた。
あれこれ言い逃れをして医者に行かない弟に兄は一族の長として威厳をもってボソッと言った。
「放っておくと人工肛門だぞ」。
この一言は衝撃的決定的な説得力があった。
「ケツの穴に真鍮のバルブが着く?」建設業経験者としてのリアルなイメージに狂乱し、前後のことを考える余裕もなく長岡の病院に走った。
主治医(主痔医?)の紹介状を見ながら「どれどれ?」と型どおりの問診のあと、人の股ぐらを診察した老先生は「立派な痔だねぇ !」とケツに響くような声で診断を下した。

名医とは先生のような人を言うのだろう。
自分の人生を懸けた職業にまつわる爽やかな自慢話をしながら、患者を安心させて手術台にのせ、若い先生につきっきりで手術をしている。
半身麻酔で、意識はあるが遠くで工事をしているような振動だけが伝わってくる。

後日談だが会社に保険金が下りた。
ただ、私の取り分は雀の涙。
社員全員で「じょんのび村」で一晩飲んで使い果たした。
「俺のケツが稼いだ金だ、遠慮しないでやってくれ!」

入り口と出口の差でしかないが口は、グルメを味わったり時には意外な役を受け持つが、出口は屁やウンチをひねり出すだけで一生日陰者の身。
今までお目に懸かったことがなかったので術後のお痔さまをデジカメで撮ってみた。
またナンテ可愛いお姿なんだろう !

悪友達が退院祝いを企画してくれ、名付けて「痔鎮祭」。
久しぶりの酒で治りかけのケツが歓喜の悲鳴を上げていた。
以来、多少の緩みは残るけど、粗相はしていないハズ。

余談だが、「置かれた場所で咲きなさい」の渡辺和子さんの本を開いていたら、「老化は神様からの贈り物」という言葉に出会った。言葉が綺麗すぎて反発もあるが、何はともあれ、健康でいるうちが一番幸せなんだろうと思う。

「令和」への改元、10連休という有史以来のゴールデンウイーク、
 でも今年はまだまだ天候不順、無理をしないで御痔愛下さりませ。

柏﨑日報 ⒋月27日掲載分