濁流の時代
子供の頃から「本屋のツケ」が効いた。
南鯖石村にも書店が一軒あり、学校の帰りにはマンガを買って帰った。
霧隠才蔵やハックルべりーは俺の英雄であり親友だった。
マンガみたいな性格は、そのころの友達が悪かったからかも知れない。
浪人時代、神田の出版社で住み込みのアルバイトをしていた。
注文のあった本を自転車の荷籠に乗せ、お茶の水の日販や東販に届けた。
夜は小宮山量平社長のサロンみたいで著名な来客も多く、お茶出しも楽し過ぎた。
左翼系の出版社なので、向かいのビルから何時もカメラが覗いていた。
今日市内の書店に行ったら近い内に店を閉じる、とか聞いた。
25歳で柏崎に戻って来て心の休まる店の一つだった。
未だに、本を電話で注文し届けて貰っている。
勿論「ツケ」だ。
店先で、無駄話が楽しめる、そんな店がまた一つ消える。