一枚のCD
小雨降る暗闇を見詰めながら、一枚のCDを流し聞きしている。12月だというのに窓を開け放したままでもそんなに寒くもない。窓辺でグラスで酒を飲みながら、暗くて何も見えない庭をボーとして眺めているのは心地が良い。もう1時を回ったのだが・・・。
「作家の使命 私の戦後」山崎豊子(新潮社)を読み続けられなくなった。作者が作品の背景を語るのには多少の抵抗がある。しかし、彼女の創作に向かう取材活動を知ることで、その小説の奥深さが増してくる、そんな思いが強い。
いろいろと批判されている作家ではあるけれど、彼女の建築家のような構想と設計、その後の細部にわたる且つ現場にたった取材、しかも膨大な資料読み込みなどを知ると、あの記述の確かな手ごたえが納得でき、新たな感動が蘇ってくる。
この本の中で何箇所かで啓示されているゲーテの格言
「財貨を失うこと、それはまた働いて蓄えればいい。
名誉を失うこと、それは挽回すれば世の人は見直してくれるだろう。
勇気を失うこと、それはこの世に生まれて来なかっ方が良かったであろう」
随分な言い方だが、誇りある生き方は何事にも優先されるべきもの、なのかも知れない。