奥底のしれぬ寒さや海の音
文春7月号を読み返していたら角折りしたページにこんな句が載っていた。金子兜太が東北大震災避難所を想像していた時に思い出した江戸時代の越前三国の女郎の句、だとか。
生きていて生きてるだけで燕来る
この震災を読んだ飯田操さんと言う人の句。読み返すだけで詰る。
俳句の、抜打ちで一刀の下に切り取られた人生の瞬間が大きな時を超えて迫ってくる。人間は自然界のあらゆる生物と同じで、時の中で生きている。生れれば人はやがて死ぬる。坂井三郎や車谷長吉のように「死ぬ時が楽しみ」とはいかないが、消滅できるのは人間の最高の幸福の様に思えるときがある。
さまざまなことが浮かんでは消えてゆく。