ルパン三世と妖怪たち

2018年11月04日 風の戯言

俺の家には妖怪が棲む。いや、女房のことではない。

台所に立ったけれど何をしに来たのか忘れ、水を飲んで部屋に戻る。
ウンコするのを忘れ、屁だけしてトイレから出てくる。いやはや !

大事なことだから覚えておこうとしたメモがなくなり、机の上に置いたスマホが消えている。
イライラが頂点に達した頃、思いもよらぬところで見つかる。

どうもルパン三世の孫達が要らぬ「ハチケ」をして遊んでいるとしか思えない。
彼らとの遊び方に慣れて来ると、それもいいのだが・・・。

「忘却とは忘れ去ることなり」君の名は・・・誰だ ? ナンテ惚ける術も身につけ、痴呆を女房に悟られないようにしている。

妖怪の効用もある。

古い本がみな新鮮なのだ。
付箋が貼ってあったり、角を折ってあったりするから一応「読んだ」ハズなのだが・・・本の中を徘徊し、読むたびに感動している。

特に浅田次郎の「蒼穹の昴」シリーズはいい。
清朝末期から満州国、日本の敗戦に至る東アジアの歴史の流れとその時代に生きた人々の呻きが聞こえてくる。
歴史を翻弄し、歴史に翻弄された西太后、溥儀等紫禁城で栄華を極めた皇族達の末路、馬賊の頭目張作霖の爆殺「満州某重大事件」、餓えと戦争で万里の長城の関外で虫けらのように殺される人達の物語の奥底に、胡弓の静かな調べが流れている。

「満州柏崎村」に未来の夢を懸け、一転して敗戦による悲惨な帰還の旅。
身近な人達の実話が背景に流れ、哀しさが覆い被さってくる。
国民を捨て、拉致された人を取り返そうとはしない「国」とは何なのだろう。

日本は何処で間違えてしまったのだろうかと思う。  

浅田次郎は星にも時間があり、命ある者の生と死の哀しさを知る人にしか優しさは生まれてこないと呟いている。
優しさとは、大切な人を守る為に鬼になれることなのだろう。

時間は流れているようで、現実には「今」という時しかない。
しかし、過去は記憶にこびり付き、遺伝子に書き加えられ、「今の時間」に生きている。

難儀なこっちゃ。

天の恩寵でもある痴呆を、妖怪やルパン三世と遊びながら毎日を楽しんでいる。
何でもかんでも遊びにしてしまう性格に「?」ではあるのだが・・・それにしても政府高官の物忘れも酷いけどね。

柏崎日報 10月15日掲載分

翔べ、大空へ !

2018年10月30日 風の戯言

「気球作って空飛ばないか」との俺の誘いに、近藤正雄は「わかった、おもしぇねか、やろて!」と即答してきた。
しかし、資料と言えばヨーロッパの草原でカラフルな気球を飛ばしている少年マガジンのグラビア写真しかなかった。

京都大学の学生達が日本初の熱気球「イカロス5号」を北海道の空に浮かべたのは昭和44年年9月28日。
「京大の学生に出来て、俺たち土方やペンキ屋にやれねえことはねえだろう」と日本で2番目の熱気球作りはそんな一言から始まった。

意気込みは凄いが、気球なんて大きな袋に熱い空気を詰め込めば大空を翔べるだろうと、その程度の知識しかなかった。
増えてきた仲間と夜な夜な若葉町の大久保神社に集まり酒を飲み、夢を語り続けた。
夢と仲間と酒があれば未来は拓ける。

京都に「イカロス昇天グループ」を訪ね、電卓2台で楕円方程式と格闘し、兎に角バカでかいテトロンの袋を作ることになった。
だけど、裁断した布の山を前に呆然とした。
縫い方を知らなかったのだ。
見かねた山室の若い女の子が「私が縫ってやる !」と、彼女の2階の部屋を全部占領し完成させてくれた。

ガスバーナーは杉平の鍛冶屋が「こんなもんだろ?」と作ってくれた。

独自設計としては残念ながら3機目、日本気球連盟の登録番号は7番 (現在1600機)になった。

「こどもの日」の大洲小学校での係留実験は失敗し、青果・魚市場の駐車場でようやく成功した。

試験飛行は川西町。気球は田圃に墜落し金子修一が7針縫う怪我をしたが、それが病み付きになり今では日本有数のパイロットになっている。
失敗が夢に火を付けたのだ。

南鯖石小学校を離陸した気球は、米山大橋の手前で藪の中に突っ込み、加納から飛び立った気球は東長鳥の山の中で行方不明になった。
やっと探し当てガスを補充し、気球は再び秋の大空を飛翔し続けた。
「翔べ、翔べ !」我々は車の窓から絶叫し、やがて「かぐや姫」は刈り入れの済んだ小千谷の小粟田原に舞い降りた。

広い雪の上で飛びたい、そんな東京の仲間の夢をきっかけに「風船一揆」が始まり、今では全国から数十機の気球と仲間が集まり、小千谷の早春の風物詩として定着し、来年は43回目を数えることになる。

後期高齢者のバカな思い出話でしかないけど、夢は追いかけ続ければ何とかなるもんだ。

そうだんべ !

柏崎日報 10月2日 掲載分

鯖石ロードレース

2018年10月28日 風の戯言

自宅前の中鯖石コミュニティで鯖石ロードレースが開かれていた。
今年44回目、息の長い、ローカルなマラソン大会だ。
年配の人から保育園児まで、赤ん坊を抱えた若いママも交えて、秋の日の温かい大会。
いいもんだね。

写真は何日か前の満月。
カメラが古いせいで朧になってしまったが、これはこれで風情がある。

秋の村祭り

2018年10月21日 風の戯言

会社の未来を託した友人の42歳の息子が亡くなり、お別れの会に参列してきた。
早すぎて、言葉もない。

帰ってきて村の秋祭りに行ってきた。
じーさんから今年誕生した子供達まで、賑やかな祭りだった。

こんな時間もいい。

写真は昨日の夕方、久し振りの虹。

赤トンボ、今夜はどこで寝るのやら

2018年10月08日 風の戯言

サピエンス全史に、人間は江戸端会議をしてきたから生き延びた、そんなことが書いてあった。
人間はアフリカを出て、旅をしてきたから、生きる為に環境に順応してきたから賢くなった、とは以前聞いていた。

浅田次郎 中原の虹を読み直している。
面白い記述があった。

日本人は、特に女の人は不幸な話が大好きで、自分の事でも些細なことをボヤいてみんなと仲良くなる、それが大事なのだそうだ。
うーん、人類が生き延びた「コミュニケーション」の極意かも知れないね。

自分の幸福や、夢や希望を語るのは毛嫌いされる。とか。
わかるなぁ・・・

写真は安田明神の奥の田圃
足に自信がなかったので、山裾まで行けなかったけれど、久し振りに散歩を楽しんできた。
秋空にトンボが舞い、小さな黄色い蝶蝶が生きていた。

椅子をもってきて、一日中この景色の中に溶け込んでいたい。

夕方の庭に蜻蛉が群れていた。

赤トンボ、今日の飯は食ったかな