ぶどう村 夢の痕
「ぶどう村」の社長になり損ねた未練が残っている訳ないが、時折刈羽三山、米山、黒姫、八石の山波が一望できるぶどう村に車を走らせる。自宅から3分もあれば山に着く。
車を止めれば、180度山に囲まれ、人家は見えない。新緑の山波が美しい。
リクライニング・ベットを下ろし、風だけが遊ぶ元のブドウ畑で、故郷の山に囲まれて静かな時間を過すのは何にも変えがたい至福の時間でもある。
ローソンの新浪剛史社長が文春のエッセイに「経営者の性」として「全てに合理的な必要性を求めてしまうけれど、経営者的、合理的な思考を一旦止めてみると「時間」が見えてきた」、と書いている。
「理屈で無いもの—文化こそ何かと息の詰るような社会に必要なのだ」、と。
一流の経済人は茶室が似合うのだろうが、少し認知症の始った自分としては、時間を忘れて山を眺めている幸福は何にも変えがたい。
故郷の山は、風達が時折こちらの様子を見に来るだけ。中に、心配そうに静かに顔を見てゆく風もいる。
山は静かで、この静寂の中に埋もれている時間が好きだ。
雨の季節
「チェ・ジュの妖しい水」と呼んでいる富士山で採取される水がWHO(世界保健機構)で認定される、という内部情報がNHK7時のニュースで公開される、との情報を得た。
馬鹿言ってんじゃないよ、ありえないだろう、でもマスコミに公開されたらウハウハだよね、ナンテ無責任な話をネタにM氏と新花町の飲み屋に集合した。
結局、ガセネタに振り回された、と言う事でしかないが、久し振りに病み上がりの二人が酒を飲めた、その事がうれしかった。俺は仮病みたいなもんだが、彼は2ケ月の入院後なので心配はしていた。大丈夫 ! 大丈夫 !
柏崎はエンマ市も終わり、季節は夏に向かう。
梅雨空の蒸し暑さが戻ってきた。
田圃に早苗が根付き、日に日に緑を増して行く。
八石の山に雲がかかり、この時期特有の姿を見せている。
雨の季節は、人の心を静まらせる。
窓から濡れた夜の庭を見るのもいいもんだ。
雨音を聞きながら、頭の中で文章が生まれて行く。