失職 !
ぶどう村の社長就任前に会社そのものが消滅しそうだ。
理由はいろいろあるが当事者として今は何も言えない。
会社の再建なんてそんなに楽なものじゃないが、それでも夢を膨らませていただけに残念で仕方がない。「所詮勝ち目のない戦」と我が身を心配してくれる人達は言う。それでも闘わなくてはならない時もある。しかしそうは言っても企業家は生き延びることに使命があるのかも知れない。
一連の再建をめぐる動きの中で、いろいろなものが見えてきた。俺はまだまだ情けないほどに未熟だ。
祈り
朝から断続的に降り続いていた雪が止み、お昼過ぎにぶどう村に登ってきた。
林道は5センチほどの雪が残り、車の跡は無い。
スリップしないように静かにタイヤを転がし、昨日祈りの場所と決めていた畑の脇に車を止め、俺流の自由な儀式で山の神々に祈った。
俺の先祖は群馬館林城が信長の配下滝川一益に攻め滅ぼされた時、敵に追われ追われてようやくこの地に逃げ延びたという。以来16代、地域の人に助けられて命を紡いでいる。
19日に議会で可決され、正式に経営が任されたならば俺は精魂を込めて再建に尽くしたいと思う。俺の願いが本物だと認めてくれるならば、山の神々よ、一緒にこの地に豊かな実りと人の心の温かさを取り戻して欲しい。そう、祈った。
不思議なことに、いつの間にか青い空が広がり、山々を覆っていた雲がはれ、温かな太陽がぶどう村に差していた。
祈りを天が聞いてくれた、と思った。
ぶどう村
自分の妙な癖の中に「半睡」みたいなのがある。
眠っているわけでも覚醒しているわけでもない状態で1時間ほど頭の中を遊ばせておく。自分の身体の一部でもあり、普段は自分と言う人間の行為の司令部でもありながら、5月の風のように、呆れるほど勝手に動き回る。よくもまぁ何処から湧いて出るのか、不思議なほどの自由の泉なのだ。
ふと思いついて、夕方近くなって「ぶどう村」に登ってきた。あの丘に感謝と祈りがなかったのではないかと思い、現地を感じたくなったのだ。不思議なことに風景は一変していた。俺を拒絶し、何とも悲しげだった風景が、まだ何も語らないけれど、親しみを見せ始めたように思えたのだ。
明日、もう一度祈りに行ってみてこようと思う。
あの風景の広がりの中にいる大地の神々達と、俺の先祖達と、この土地に生き継いで来た人々と、このぶどう園を切り開き守り続けた人々の想いを感じ、俺は何をなすべきか問うてきたいと思う。
柏崎ぶどう村 社長就任?
7日、ぶどう村への柏崎市の出資8000万円の是非を問う意見拝聴会が終わり、新社長予定者としての名前が公表された。正式には2月19日の臨時議会の議決次第。議会が通れば取締役会、株主総会を経て4月1日正式就任となる。
現状から言えば借入金16000万円、累積赤字6000万円の問題企業。今回増資をして15000万円の会社になる。当然国税局扱いになり、柏崎市の出資比率も70%になり、大変な会社になる。
しかし、此処の土地は思いの篭った土地であり、景観も美しく、俺は此処を守りたいと思う。
美味しいワインを造り、多くの人たちと芳醇な香りを楽しみたいと思う。
俺に出来ることを探している。
全ては議会の思し召し、だ。