大水の思い出
毎年決まってこの時期に鯖石川が氾濫し、堤防が決壊し、田圃に水が上がった。鮒や鯉が濁流に流されまいと中堤防の草むらに集まり、その魚を狙って大きなタモで魚を追いかける。稲が泥水に埋まっているのにこの大人たちは何してるんだと不思議に思いながら一緒になって魚を追いかけた。
この日は旧南鯖石村田島の普広寺さんで毘沙門の裸押し合い祭りが行われ、学校も半日休みになり村中の人達が集まった。小さな米俵の争奪に熱気が篭り、露天市も出て、変化の少ない村の生活の中では特別に楽しい行事だった。今はどうなっているのだろう? 近くに済んでいても行くことも無くなった。
7月の台風としては記録的な4号台風が過ぎていった。幸い、柏崎は心配していた雨も無く、ほっとして休まれた3連休の中日になった。
会社経営なんて雑多な用事が多く、いろいろ心配すれば限が無い。際限も無いインプットを自動制御するために遊ぶか趣味に没頭するしかないのだろうが、時間の使い方の下手な自分にとってはノンビリと過すここの生活は最適なんだろう。
雨の心配もなくなった午後、風呂を立てた。明るい内に風呂に入るのは、俺の世代では最高の贅沢で、風呂の窓から周光院の裏山を見ていると心が休まる。屋根下にアジサイが咲き、裏の田圃の稲が勢いを増していた。
今年は雪が少なく田圃の水不足が心配されたけれど、もう大丈夫だろう。そう言えば昨日は稲虫送りだった。松明と太鼓の音で虫たちを集め、川に落そうという些か現代離れしたこの行事も好きだ。
七夕ライブ
いつの間にか日付変更線を過ぎていた。
だからもう昨日のことになるけれど、未完成の七夕ライブはいい時間だった。
7月1日の未完成創立記念日を少しづらせて7日に七夕ライブをやるようになって4年目。ファンも増えて、小さな店が満員になった。
若い頃、新宿ピットインで日野皓正を聞きたいばかりに小瓶のビール一本持たされ壁にへばりついてジャズを聴いていた時期があった。遠い昔の話だ。
演奏の間に新潟ジャズストリートの話を聞いた。新潟地震の直後、デューク・エリントンはハワイ公演をキャンセルして一団を率いて来日し、新潟で励ましのコンサートを開いたという。5年前から始まり、今は町中でジャスが演奏され、新潟の新しい夏の風物詩として定着したようだ。長く続くイベントには魂の物語が語り継がれている。いい話だ。
コピーは所詮コピーでしかない。コピーは自分の悲しさを自分が一番知っているのかもしれない。だから、感動は伝わらない。どんな状況であれ、己の信ずるものを手放してはいけないのだろう。
未完成と言う小さな店が4年生き延びてきた。藤巻雄吾君と言う若い一途な情熱が乾いた柏崎という地に一粒の種を育て、生き延びてきている。嬉しいね。彼はそんな賛を照れながら、「いえ、まだまだです」と謙虚に受けとめている。まだまだいろいろな物語があるのだろうけれど、率直に感謝の気持ちを伝えようとする前向きの姿を美しいと思う。
いつかまた、そんな語られざる物語を感じながら酒を飲みたいと思う。
いい夜だった。ありがとう。
西本写真館
7月5,6日、関西のお客様を訪問して来た。
和歌山の西本写真館と犬山のラ・セーヌ様。泊りは噂のリッツカールトン大阪。全てに完璧な出張だった。
和歌山の西本写真館さんは、富士写真フィルムのユーザー会PGCの熱い要請で作成した写真館専用ソフト「ハイ、ポーズ!」の最初のユーザーさんでこのパッケージソフトの完成に大変お世話になった人なのです。建築後間もない建物にランケーブルを這わせ受付、事務所、撮影現場をネットワークで結び、事業の効率化より「お客様に驚き」を持ち帰ってもらいたい、そんな思いの篭ったユーザーでした。
私も創業間もない頃で体力だけが勝負と、いつも夜が遅かった。開発センターの事務所に電話が入ったのはもう深夜に近かった。西本先生だった。「石塚さん、まだ居たね」「うーん、仕事が終わらなくてね、だけど先生、こんな夜になにかあった?」「うん、まだ仕事しているんだけど・・・心のあるソフトウェアだね」
夜中に一人で、必死になって仕事しているときに、こんな感動的な励ましを貰ったら、もう場所も歳も忘れて一人でワンワン泣きしてしまった。デモ嬉しかったなぁ。
何年か経って、リプレースの納品時には立ち会えなく、「何だ、社長来なかったのか。飲みに行きたかったのに」と言う話を後で聞き、何年も後悔を引き摺ってきていた。やっとあえて、思い出話と営業の話と人生の話が出来て、俺は最高に楽しかった。
宿泊はリッツカールトンを取り、身分不相応なホテルをなめずるようにしてみてきた。やはり、人の動きと笑顔が違うなぁと思った。内装も絵もウィスキーも本物だった。バーで俺はシェリーの「ティオ・ぺぺ」を飲みご機嫌だった。
寝室は至れり尽くせりで、ベッドの硬さがミラクル状況。
ここに一人手来ることは犯罪を犯すことと同意義だね。
6日は犬山のラ・セーヌ本社を訪れ、忙しい社長の時間を2時間近くも取り上げてしまった。いろいろな温かい話が聞けてよかった。
社長の気楽な訪問のようで、デモお互いの信頼の確認であり、いつか又大きな花を咲かせてくれるでしょう。
高校生の頃の本で日本の城郭を解説した本に「犬山城」があり、いつか天守閣に登ってみたかったところ。天気もよく、周囲は絶景だった。遠くに金華山が見え、戦国末期の戦場の雄叫びが聞こえるような、そんな一日だった。
老人の、今生の思い出の旅、じゃ無くて、おれはやるぜぇ! 見たくさけびだしたい旅になった。ありがとう。