野仏
人の住まなくなった廃村の、誰も住まなくなった空き家を見るのが好きだ。
余りいい趣味とは言えないが、昔子供たちが走り回っていただろう村の風景に沈み込む。
人って、人生って何だろう?
車を走らせていると、誰も住んでいないような所に、今も小さな畑や田圃に出会う。
昔の人達も一握りの米の飯に命の火を燃やし続けて来たのだろう。
そんな小さな命を燃やし続けてきた老いた人たちとって、今の時代は何とも理不尽な世に見えるのかも知れない。
市野新田の奥の、普段は人の住まないだろう集落の入口に、傘を被せて貰った野仏が誇らしく立っていた。
人は、時間というとてつもなく大きな異界に落ちて来た、たった一粒の水滴なのかも知れない。