越路吹雪
窓を開ければ星達が瞬き、車が通り過ぎた後はまた元の静寂が訪れ、窓下の田圃から弱弱しい蛙の音が聞こえてくる。 ロウソクを灯しながら風呂に入っていると天と地が繋がって、これ以上望むべくもない最上の時間が過ぎてゆく。
多分、BSで越地吹雪のビッグショーに浸っていたせいだろう。コメントは一切無く、ただ彼女のステージだけが流れる。「サントワマミー」「ろくでなし」「人生は過ぎゆく」・・・音楽とは縁の薄い自分に、改めて音楽の豊かさと人生の深さを示唆してくれる。 「こうちゃん」、と彼女のファンはそう呼ぶ。自分の恋人に対するように親しみと深い愛情を込めて。2人の印象的なファンを思い出す。一人は横浜時代お世話になった貿易会社の周社長、彼は学生だった俺達にいつも「こうちゃん」の話をしていた。もう一人は越後タイムスの吉田元主幹。リサイタルの知らせが届くと「仕事が手につかない」で東京に駆けつけていた。
俺の人生は何と浅はかで情熱に乏しかったのか・・・今更・・・と思いながらやはりスターと呼ばれる、万人を魅了する人の凄さに感動し、今も頭の中で「ろくでなし」がリフレーンしている。
余計なことだが、今日の取締役会の後の雑談で中村天風を話した。悩みの深さでしか理解できないのだろうが、生きることの深さと、生きる時間の長さのバランスを考えたりしている。
今日はいい時間が多かった。
春祭り
午前中の社員の弟さんの葬儀に参列して自宅に帰ったら、前の公園で村祭りの神輿が一息入れていた。礼服をジーパンに着替えて仲間に加わった。休日にやっておかなければならない仕事が頭をかすめ、輪の中に入れない。そういえばもう何年も祭りに加わらないで仕事と月曜日から始まる闘いの気力を蓄えることだけを最優先させてきたような寂しさが吹き上げてきた。
みんなが、次々にビールやつまみを持ってきてくれて、空白の時間を埋めようとしてくれている。嬉しかった。
八所さんという神社が小さ過ぎるし石段も楽じゃない、ならばと回り道を切り、拝殿をを広げたのは何時だったろう。あの頃は近所の村人達と気持ちも一緒だったように思う。
来年は集落に2つある神社が一つになるという。その時はもう一度みんなの中に交えて貰って、祭りの一日を心行くまで楽しみたいと思う。
夕方の神社の片付けに行ってみて、まだ気持ちの繋がってるのを確認できて、とてもうれしかった。しばらく、近所づきあいは全部女房任せだったから。